【歌手・曲例あり】ヒーカップ唱法とは|やり方・練習方法

ヒーカップ唱法とは

ヒーカップ唱法とは、歌のフレーズ末尾のピッチを跳ね上げて収束させる技法。歌のニュアンスを出すためのテクニックとしてうってつけです。声域を変えずにできる技法ですが、厳密な決まりはありません。本来は裏声に跳ね上げる技法で、特に日本では完全に裏返さずに地声やミックストーンに跳ね上げることが多いです。

ヒーカップ唱法は、1950年代にロカビリーで用いられて普及した歌唱法です。その名の通り、英語の”hiccup”に由来し、しゃっくりのように音を跳ね上げることから、そう呼ばれるようになったようです。

なお、日本の「しゃくり」と呼ばれるテクニックとは別物です。「しゃくり」とは、フレーズの冒頭で下から入る技法のこと。「ヒーカップ」は、フレーズの終わりで飛び跳ねるというテクニックです。

しゃくりとは

ヒーカップのやり方

ロカビリー音源のように後ろにひっくり返るヒーカップ、J-POPによくある完全にひっくり返らないヒーカップと、ヒーカップには2つのタイプがあります。

ロカビリー時代の音源を聴くとわかるのですが、語尾を裏声に返しながら歌うと「ヒーカップ歌唱」と呼ばれることがあります。語尾を上下に跳ね上げるように意識して後ろ向きに歌えば、自動的にヒーカップになります。

日本のヒーカップは、すべて完全な裏声になる前で止まります。これには声帯の動きの練習が必要になります。声帯を収束させて、音程を跳ね上げながら「キュッ」とさせることが重要。

つまり、声帯の解放と収束をイメージすることが大切なのです。

ヒーカップのやり方は、以下の4段階を経てできるようになる人が多いのではないかと思います。

  1. 声を止めて静かに呼吸する
  2. 声を止めた瞬間に優しく声を出して優しく呼吸をする
  3. 音程を動かす
  4. なめらかにする

最初の一歩は「声を止めて静かに呼吸する」です。

「アーーーーー(止める→早く呼吸をする)」

まず、言いたいことを何でもいいので口に出します。途中で声(息)を止めます。止めた直後に、「そっと」息を吐きます。

この「すぐに軽く息を吐くこと」が声帯を解放することになります。このニュアンスがとても重要です(一度完全に息を止めてみるとコツが掴みやすいはずです)。声を止めたら、なるべく早く、そして柔らかく息を吐き出す。まずはこれを練習してください。

次に「声を止めた瞬間に優しく声を出して優しく呼吸をする」です。

「アーーーーーアッ(止める→すぐに息を吸う)」

先ほどと同様に呼吸を止めた部分に小さく短い声を入れます。一瞬「アッ」と入れたら、先ほどと同じように止めて、すぐに呼吸をします。この時、すでに「ヒーカップ的」になっているはずです。難しい場合は、この練習を繰り返してください。

その次は「音程を動かす」です。

「アーーーーーアッ(止める→即座に呼吸する)」

小さな「アッ」の部分でピッチを跳ね上げます。上げるピッチは好みです。この時点でもうほとんどヒーカップの音色になっているはずです。

最後は「なめらかにする」です。

「アーーーーー(止める→即座に呼吸)」

先ほどと同じ感じを保ちながら、最後の「アッ」を消すように滑らかにします。これでヒーカップが出来上がります。あとはこれを歌に落とし込むだけです。

ヒーカップを使う歌手・曲

ヒーカップの音楽効果を考えるのはなかなか簡単ではなく、下記のような要因で印象は異なります。

  • 音楽性

ヒーカップで音が良くなるかどうかということではなく、むしろ情緒や音色の表現として効果的でなのです。以下ではヒーカップを用いる歌手を紹介します。

稲葉浩志(B’z)

稲葉浩志の発声表現は、もともと「ロック」の先祖である「ロカビリー」が生み出したものです。

語尾を跳ね上げることで、パワフルな語感の上昇感を表現します。

松田聖子

80年代に日本のアイドルを中心に流行した歌唱スタイルを持つ松田聖子。現在でも、アイドルやアニソンのスタイルでよく使われています。

語尾を跳ね上げるというニュアンスに、「かわいい」の要素が含まれます。

hyde(L’Arc-en-Ciel)

hydeのヒーカップは、どこかセクシーな印象を与えます。声が上下に跳ねて「カチッ」と止まるというニュアンスが、「声が漏れる」ようなニュアンスを生み、結果的にセクシーな印象を与えるのです。