歌のこぶしとは|やり方・練習方法・しゃくりやビブラートとの違い

こぶしとは

こぶしの意味

「こぶし」とは、歌の音程を不規則に上下させるテクニックのこと。

演歌や民謡でよく使われる技法なので、「こぶし」と聞いて、演歌歌手を思い浮かべる人は多いはずです。

音程をただ上下するだけでなく、うねりのような歌声を出します。

こぶしを使わずに歌うことは、楽譜的には問題ないのですが、こぶしがあることで歌の表情が豊かになるのです。

しゃくりとの違い

歌の「しゃくり」と「こぶし」は、どちらも感情を表現するための演出的な歌唱法ですが、少し異なる点があります。

「しゃくり」は、歌の途中で声を詰まらせるように一瞬息を止め、その後に声を強く出すというもので、感情的なシーンで使われることが多いです。例えば、悲しい箇所で感情が込み上げてくるような場面などで使われます。

一方、「こぶし」は、音程が変わるように声をつまらせ、力強く吐き出すような感じで、主にロックやパンクなどの激しい音楽ジャンルで使われます。曲の盛り上がりやハイライト部分で使われることが多いです。

どちらも感情的な表現をするための演出的な歌唱法であり、曲の雰囲気やジャンルに応じて使い分けると良いでしょう。

ビブラートとの違い

ビブラートは、音が規則正しく上下する奏法です。

こぶしがうねりのように歌うのに対して、ビブラートは波紋のように歌うので、聴く人に心地よさや安心感を与えることができます。

ビブラートは、より上手に歌いたいときや気持ちよく歌いたいときに、こぶしは歌詞を強調したいときや力強く歌いたいときに使うとよいでしょう。

こぶしは演歌や民謡のイメージが強いですが、ポップスやロックでもよく使われます。

日本独自の歌唱法というわけではなく、海外では「フェイク」と呼ばれて歌に用いられます。

こぶしは、歌に躍動感を与える、歌詞を強調する、独特の歌い方をアピールするなどの利点があり、さまざまなジャンルの歌唱に有効です。

カラオケでの加点

多くのカラオケシステムには採点機能が付いています。点数が明確に表示されるため、この機能に違和感を覚える人もいるかもしれませんが、こぶしを使いこなすことでカラオケの採点に有利になることもあります。

一般的に、カラオケの採点システムは、点数制です。音程の正確さ、表現力、安定性など複数の採点項目があり、それらを総合したものが総合得点となります。

こぶしは採点項目の一つ。こぶしをマスターしたかどうか、カラオケに挑戦してみることをおすすめします。

こぶしのやり方

安定したロングトーン

安定したこぶしを作るためには、ロングトーンを安定させることが必要です。

他の部分で息を使い切ってしまい、うまく音を伸ばせないと、こぶしを作る余裕がなくなります。

力を入れずに息を吐きながら歌うことで、ロングトーンが安定します。

まずは同じ音を同じ強さで長く出せるように練習しましょう。

ロングトーンを安定させる練習は、歌唱力全体の向上にもつながります。

腹式呼吸の使用

ロングトーンを安定させるためには、腹式呼吸を意識することも必要です。

お腹にたくさんの空気を取り込む腹式呼吸は、普段行っている胸だけを使った呼吸よりも、一度にたくさんの空気を使うことができます。

そのため、歌っている最中に息切れしたり、無駄に息を止めてしまったりすることが解消され、安定してロングトーンを展開しやすくなるのです。

また、こぶしの練習をするときは、お腹の上に手を置いて、集中したい音を歌うときにお腹をしっかり押さえることをおすすめします。

こぶしのやり方のコツ

強調したい音に使う

こぶしは伸ばす音全てに使うのではなく、特定の音を強調したい場面で使うことをお勧めします。

こぶしは聴衆に与える印象が強いので、何度も使ってしまうと、歌詞や歌声、歌唱力だけでなく、こぶしにも気を取られてしまうのです。

せっかくこぶしを練習しても、使いすぎると違和感があったり、下手になってしまうので、使うタイミングと使わないタイミングを見極めることが大切です。

母音にフォーカスする

母音を意識することも、こぶしを歌うコツです。

ただ母音を伸ばすのではなく、歌詞にプラスしてもう一度母音を発音するように歌ってみてください。

そうすると、自然とこぶしを作りたい部分が強調されます。

2回、3回と母音を発音することで、カラオケ採点でも「こぶし」と認識してくれます。

一方、ビブラートを使いたい場合は、母音を使わずに歌うように歌う必要があります。

こぶしの練習方法

歌のこぶしは、歌声を力強くするための発声法の一つで、声帯を強く振動させることで高い音を出す技術です。こぶしは、通常、ロック、R&B、ソウル、ファンクなど、力強い音楽に多く使用されます。

こぶしの練習方法をいくつか紹介します。

  • 声を高くする:こぶしの練習は、まず声を高くすることから始めます。高い音を出すためには、声帯を強く振動させる必要があります。高い音を出すには、口を少し開いて、胸を張って、息を吸い込むことが重要です。
  • 絞り出しの練習:絞り出しは、低音から高音までの音程を滑らかに歌う技術です。これにより、声帯を強化し、こぶしを練習することができます。
  • 喉のトレーニング:喉を鍛えることで、より力強い音を出すことができます。口を開けて、アウトという音を発声することで、喉を鍛えることができます。

これらの練習を繰り返し行うことで、こぶしの練習をすることができます。ただし、無理をせず、自分の声に合った練習を行うことが大切です。また、声を出す前に、必ずウォーミングアップをすることを忘れずに行いましょう。

こぶしを使う曲・歌手

一青窈「ハナミズキ」

一青窈は、歌にこぶしを入れるのが得意なアーティストで。演歌のような長いこぶしではなく、素早いこぶしをところどころに使うことで、独自の個性的な世界観を表現している。「ハナミズキ」で印象的なこぶしの部分は、「果てない夢が(あ)」「終わります(う)ように」です。

美空ひばり「川の流れのように」

昭和の歌姫、美空ひばりが歌った大ヒット曲「川の流れのように」。

歌詞をひとつひとつなぞるように歌うそれは、こぶしに限らず、歌の練習で挑戦するのに最適です。むしろ、歌が得意な人に参考までに歌ってもらうのがいいかもしれませんね。

AI「STORY」

AIはアメリカ生まれのソングライターです。2014年公開のディズニー映画 “ベイマックス” の日本版エンディング曲としても使用された「STORY」。R&Bのメロディが心地よく、ところどころでこぶしを突き上げるのが印象的なソウルフルな楽曲です。曲を聴きながら、こぶしを作るときの参考にしてください。